ざっくり言うと、『羅和辞典』(らわじてん)はスマホのような辞書です。
それもそのはず、いろんな機能がつまっているからです。
ラテン語の辞書がほしいなら、まずこれを買えば間違いないと断言できます。
私も10年以上ラテン語を読むなかで愛用してきて、今でも参考にすることがあります。
この記事では自らの経験をふまえて『羅和辞典』を徹底レビューしました。
実際に使ってきたからこそわかるメリット、デメリットをまとめていますので、
どこがいいの? 本当に使えるの? と
迷っているかたは必見です。
これが『羅和辞典』だ
『羅和辞典』の正式名称は『〈改訂版〉羅和辞典』です。
(この記事ではずっと『羅和辞典』で通しますね。)
出版されたのは2009年で編集者は水谷智洋です。
改訂版と言いつつ、改訂前の羅和辞典と改訂後の『羅和辞典』は全くの別物で素晴らしいです!
私がラテン語の勉強を始めた時にはまだ、この改訂版が出ていなかったので、この辞書でラテン語を学びはじめる人たちがうらやましいです。
外見はこちら。箱と中身を並べています。
こちらが箱
中身はこちら。
透明のビニールカバーがついています。
厚さは3.5センチ
開くとだいたいB5サイズで机の上にもかばんの中にもおさまりやすいサイズです。
B5ノートを上に置くとこんな感じで少しだけはみでます。
背表紙はこんな感じ
LEXICON
LATINUM- JAPONICUM
EDITIO EMENDATA ◆ auctore T. MIZUTANI
と書かれています。
※写真ではビニールカバーを外しています※
写真からわかるように、ソフトカバーなのでとても引きやすいです。
中の紙もいいですよ。
紙はこんなの
・クリーム色
・書き込みもしやすい紙質
・ある程度の厚さはあってペラペラではない
おすすめポイント
この辞書ははじめに書いたようにスマホのようなもの。一冊あればいろんな使い方ができます。
スマホにはアプリがたくさん入っているようにこの辞書にはいろんな機能がつまっているからです。
機能というのはこちらです。
羅和辞典の機能
一つずつ見ていきます。
なんといっても羅和辞典!
羅和辞典(らわじてん)とは「ラテン語―日本語」辞典のこと。
ラテン語の単語を引けば日本語訳がすぐにわかるので、学習者にはとっても便利。
見出し語は4万5千語と充実しています。
ラテン語の勉強では、ラテン語の例文を日本語に訳すことが多いです。
講義を受ける場合は授業の中で練習問題の答え合わせをすることがあって、「日本語に訳してください」とよく言われます。
独学の場合もテキストの練習問題を和訳することになるでしょう。
そんな時にはやはり何通りかの日本語訳が載っている羅和辞典は役に立ちます。
載っている単語の中から例文に合いそうなのを探せばいいのですから!
初心者が講義や独学で使うことになるテキストにはたいてい語彙集がついているので練習問題を解くには辞書がなくても実は十分ですが、
やはり辞書の充実度にはかないません! 持っていると安心です。
例文あり
この辞書はコンパクトなサイズでありながら、用例や例文が充実しています。
例えば、animusという単語を引くと
1精神 2心 3性質、気質 4勇気、大胆 5高慢、尊大 6意志 7思考力、知性 8判断 9記憶 10意識
というように日本語の意味がならんでいますが、これだけでなく
Ex animo 心から Cogito cum meo animo 私は自分の頭で考える Linqui animo 気を失う
などの用例と例文も載っているのです。和訳もついているのがありがたいです。
実際によく使われている表現なので、いずれ読むことになる文章でもでくわすことになります。
辞書でこういう用例を知ることで、「精神」なのか「尊大」なのか「思考力」なのかと迷うことなく、日本語に訳すことができます◎ 文法を学び終えて、読解をするようになってからも役立ちます。
和羅語彙集
巻末に100ページ超の「和羅語彙集」があります。
これは羅和辞典の逆バージョン。
日本語を引くと、その意味をもつラテン語の単語が複数出てくるというものです。
これは眺めるだけでも楽しめます。
項目は、いつの時代でも使われる日常用語
愛する 挨拶 いつも 金庫 時刻 長い 満足
から
アメリカ合衆国 ウォークマン 宇宙ステーション 機関車 ストライキ
などの現代語まで幅広くそろっています。
習った文法を応用して何かラテン語で書いてみよう! という時にも使えます。
動詞の表
巻末の動詞の変化表は、地味に見えて結構な価値があります。
ラテン語を10年以上読んでいる私も、今だに参考にすることがあるくらい。
いわば「孫の手」のようなもので、かゆいところに手が届きます!
見てください、この表を。
文法を習ってまず出てくるamo「愛する」という動詞の変化表です。
左上だけ写したのがこちら。
amoだけでこれだけ変化するので、長く勉強していても、あまり出てこない部分はコロッと頭から抜けているところがあります。
そんな時はこの表が大活躍。
これを見ると、どの時制・人称でどういう形になるのかがパッとわかるのです。
ここまで動詞の変化をコンパクトに網羅して掲載している文法書は(たぶん)ないので、この変化表は貴重でずっと使えます。
以上がおすすめポイントです。
まとめておきますね。
おすすめポイントまとめ ・羅和辞典 和訳するのに役立つ ・用例あり ラテン語を読むのには必須 ・和羅語彙集 ラテン語作文も夢じゃない ・動詞の変化表 かゆいところに手が届く! ずっと使える!
要は、いろんな機能があって長く使えるということです。
デメリット
デメリットは2つあります。
1、用例と例文
ラテン語の日本語訳はたくさん載っているものの、用例と例文の比重は少なめです。
文法を勉強している時と、その後の易しい文章を読む時だとそれで十分ですが、
いろんな文章、特にカエサルとかキケロとかオウィディウスとかの古代ローマのラテン語原典をどんどん読むとなると物足りなくなるかもしれません。
そんな時は『羅和辞典』をいったん卒業して英語など外国語の辞書に移行するタイミングです。
いわばステージが上がるようなもの。
次の辞書を手にするベストタイミングです。
ただ、さっきも書いたように「動詞の変化表」や「和羅語彙集」はずっと使えます◎
2、ちょっと高い
値段に驚くかもしれません。
本体価格は6000円、税込み6600円です。
中学生、高校生時に使われる英和辞典だと同じ大きさの辞書が半額くらいでありますよね。
でも、長く使えることを思うとこれは必要な先行投資です。
元がとれるくらい使い倒しましょう!
他との比較
羅和辞典は他に2冊あります。
一つは改訂前の『羅和辞典』(田中秀央編)です。
今は入手困難になっていますし、便利な改訂版があるので、
あえて古い方を使うこともないでしょう。
もう一つはこちら、『古典ラテン語辞典』國原吉之助
お値段はなんと40700円!
しかもボリュームもあって重い!
ただ、学習者にとって引きやすかったり文法のまとめ一覧があったりするので資金面で余裕のある方にはいいかも。
~『羅和辞典』がリーズナブルに思えてくる不思議~
まとめ
まとめると、「ラテン語―日本語」の辞書で手軽に手に入るのは今のところ研究社の『羅和辞典』だけです。
しかも、いろんなお役立ち機能があってスマホのように便利。
ラテン語学習者の必須アイテムです。
これを使って、がりがりラテン語を学んでいきましょう!