こんな疑問に答えます。
本記事の内容
私はかれこれ10年以上ラテン語を学んでいますが、はじめの頃は難しい文法に悪戦苦闘していました。でも続けるうちにコツもつかみ、今ではラテン語を読むのが日々の楽しみになっています。
そんな経験をふまえて、ラテン語学習を続けるためのアドバイスを書いていきますね。
ラテン語を学んでいるなら、難しいからといってやめるのはもったいない! ぜひ記事を読んで、新たな気持ちでラテン語に取り組みましょう。
目次
ラテン語は難しい【有名人による証言】
もし、あなたがラテン語学習をしていて「難しい、大変」と感じているのなら、それは正しい感覚です。
多くの人がそう感じてきています。
たとえば、この方も。
池田理代子 同じ土曜日にとっている「イタリア語」の授業がむしろ楽に感じられるくらい、ラテン語は難しく苦しい。 苦しいが、しかし楽しい。はっきりいって、まるでジグソーパズルの世界である。どのように苦しく楽しいかというと、たとえば、 Homo homini lupus. Nos autem in homine hominem videre studebimus.(人間は人間に対して狼である。それでもわれわれは人間の中に人間を見るよう努める) という文章のように、“人間”を意味するhomoという単語のさまざまな変化形と格闘して、気も違いそうに混乱する濃密な時間を過すのだ。 ああ、たったこれだけの文章を解読するために、何十分という時間が費やされることか!
ラテン語学習者なら共感するでしょう!
これを書いた池田理代子さんは、マンガ『ベルサイユのばら』の作者です。
47歳で東京音楽大学に入学して声楽を専攻し、ラテン語の授業もとっていたようです。
ラテン語はパズルという表現にはとてもうなずけます。私もそう思っていました。
ラテン語でつまずくポイント【実例つき解説】
ラテン語の勉強で、どうして戸惑う人が多いのでしょうか?
まず、挙げられるのが、ラテン語は古典語だということです。母語として話す人はいないため、ラテン語学習というとどうしても「読んで訳す」のがメインになってきます。
現代語はネイティブスピーカーから学ぶことができ、学習内容にスピーキングやリスニングも含まれているため、いろんな方面から身につけていけます。一方で、ラテン語は机に向かって勉強する時間がどうしても長くなり、勉強内容が「リーディングのみ」になりがちなのも、とっつきにくい理由でしょう。
文法も現代語とは違います。ラテン語を学んで、まず驚くのが名詞や動詞の変化の多さです。
英語、フランス語、イタリア語などはここまで名詞が変化しないので、現代語を学ぶ感覚でラテン語に取り組んでいると、大パニックにおちいります。
ラテン語学習にすっと入っていけるのはロシア語を学んだことのある人です。ロシア語はラテン語と文法が似ていて、「格が6コ、性が3つ、冠詞なし」だからです。
でも、そんな方はあまりいないと思うので、多くの方は大変な思いをするでしょう。
数ある変化の中でも、つまづきやすい文法事項があります。
つまずくポイント
一つずつ解説します。
名詞の第3変化
名詞は第3変化が出てきた段階で一気に難しくなります。
それまでの出てくる第1変化や第2変化とは大違いで、複雑だからです。
おまけに、格によっては第2変化の別の格と語尾が同じだったりします。
第1変化と第2変化しか出てこない世界 語尾がiになる名詞は、第2変化名詞の 男性・単数・属格もしくは 男性・複数・主格もしくは 中性・単数・属格です。
なんて思った矢先、登場するのが第3変化名詞です。
第3変化名詞の登場した世界 語尾がiになるのは、第2変化名詞の 男性・単数・属格もしくは 男性・複数・主格もしくは 中性・単数・属格 + 第3変化名詞の単数・与格なのです。
これまでの属格と主格に加えて、与格の可能性まで出てくるとなると、あら大変。
これまでの慣れが通じません。
頭が大混乱!!!
私はそれまで宿題が1時間で終わっていたのに、第3変化が出てきてからその何倍もの時間がかかるようになりました。
動詞の接続法
動詞の接続法もやっかい。
これまでに覚えた動詞(直説法)の活用の法則が崩れ去るからです。
amo「愛する」の現在形の変化が、これまでは
直説法・現在 amo amas amat amamus amatis amant
だったのに、
接続法では
接続法・現在 amem ames amet amemus ametis ament
なのです。
接続法の出てくる文がどんな意味になるのかも、初心者にはやっかいです。
代名詞
これ(hic haec hoc)
それ(iste ista istud)
あれ(ille illa illum)
それぞれが格によって変化します。
新しい活用や文法にとまどっている間もなく、
指示代名詞(is ea id)
人称代名詞(ego)
疑問代名詞(quis quae quid)
なんかも、次々に出てきます。
ラテン語でつまずいた時にやるべき5つのこと
そんな時にやるべきことはこちらです。
ラテン語でつまずいた時にやるべき5つのこと 1、時間のかかる覚悟をする 2、復習する 3、単語帳を作る 4、人と比べない 5、気晴らしをする
一つずつ解説します。
時間のかかる覚悟をする
短時間で片手間に済ませようという思いは捨てましょう。
佐藤優はこう書いています。
筆者は、同志社大学神学部に入ってから小説をほとんど読まなくなった。 神学を本格的に勉強するには、ドイツ語、新約聖書ギリシャ語、ラテン語などの面倒な外国語を習得しないとならない。さらに神学は、哲学の言葉を用いて議論することが多いので、哲学史の勉強もしなくてはならない。 それだから、下宿にあったテレビと小説類はすべて友人に贈与し、勉強時間を確保した。
佐藤優の言うように、実際、ラテン語は「面倒な外国語」です。名詞については単語一つずつについて、「性・数・格」を考えていかなければいけません。「男性・単数・主格」「女性・複数・対格」のように、見極めてはじめて、ひとつの文を日本語に訳すことができます。これが、ラテン語がパズルのように思わせている点です。
佐藤優のようにテレビと小説を手放すことまではしなくても、勉強時間は確保しましょう。
大学生は、さぼったり怠けたりしているのがかっこいいように思うかもしれません。でも、意外と見えないところでみんな勉強していたりするものです。
これを読んでいるあなたも、せっかくラテン語を始めたのなら、人知れずこっそり勉強を積み重ねましょう。活用表を部屋に貼っておいて、一日一回は目を通すなど、テキストを開かずにできる勉強法も取り入れながら、無理なく続けられる方法を探っていくのがおすすめです。
そうすれば、あとあと
と一目置かれるようになります。(きっと)
復習する
すでに習った文法を復習しましょう。具体的には、授業で使っている文法書をはじめから読み直してみるので十分です。
つまずいた時は、これまでに習ったことを忘れている場合がほとんどです。
一度気軽にぱらっと文法書を見ていくと、どこでつまずいているのかが分かって、疑問点も解決していくでしょう。
単語帳を作る
単語帳を作ってみるのもおすすめです。
名詞だったら、第1変化、第2変化、第3変化、⋯⋯というように、変化ごとに単語をまとめていきます。動詞だったら、第1活用、第2活用、⋯⋯というように活用の種類ごとにまとめてみるのもいいでしょう。
たとえばこんな感じ。
(『標準ラテン文法』の第2課に出てくる第2変化の名詞をまとめました)
作るうちに、頭の中が整理されていきます。
動詞の活用も整理しておきましょう。
活用がごっちゃになっている人におすすめなのは、こちら。
研究社の『羅和辞典』
巻末の動詞変化表がきれいにまとまっていて、使いやすさ抜群です。私もよくこの表を見ながら勉強していました。
辞書はまだいいやって思うかもしれませんが、いずれラテン語の文章を読むときに必要になるので、今から持ってもっておくのもいいですよ。
人と比べない
人と比べるのは無意味。大事なのは、自分自身です。
でも、クラスにできる人がいると、ついつい自分と比べてしまいますよね。そんな時におすすめなのがこちら。
「いままでこんなにたくさんやってきたな」と、いままで歩いてきた道のりを改めて確認し、「自分はよくやっている」と肯定的に捉えてあげましょう。
たとえばゴールはまだ先だったとしても、これまでしてきたことを認めて着実に進んでいることを実感することが大事です。
ラテン語を学んで達成したいゴールを思い出し、そのために自分がこれまで学習してきたことを確認しましょう。
たとえば、「テキストの三分の一まで進んだ」とか「ラテン語の単語がはじめよりわかるようになった」でOKです。
「まだこれだけか」なんて落ち込まずに、「これだけ進んだ」と肯定的に考えましょう。
また、ここだけの話、あなたの隣の席のよくできる人は、すでにラテン語を勉強したことがある人かもしれません。授業やテキストの内容がすでに学んだことだとしたら、よくできても当然! 気にする必要はありません。
気晴らしをする
普段の文法書を一度離れて、こんな本を手に取ってみましょう。
ラテン語文法を違った角度から見ることができて、ちょっとした気分転換になります。
気分転換とは言いつつ、ラテン語文法を学習しているからこそ「わかる!」と思える箇所がたくさんあるでしょう。
こちらの本は、文法事項を覚えずに学習を進めていくというスタンスで作られています。B5サイズの薄い本にラテン語の名言を書き込みながら学んでいくという、珍しいタイプです。
こちらもおすすめです。

誰かが言うのを聞いたことがあると思います。どうしてなのか、その理由はこの本を読むとわかります。ラテン語と英語に対する新たな見方を知れる、楽しい本です。
(てっとりばやく知りたい方は、こちらの記事をどうぞ)
秘策はこの方法【中級者にもおすすめ】
ラテン語をどうしても習得したい!という人におすすめな方法があります。
音読です。
文法書に出てきた文の文法構造を解読し、日本語訳も頭に入れた状態、つまりしっかりと理解した上でラテン語の本文を何度も音読するのです。気に入った文章は暗記してしまうのもいいと思います。
地道な作業ですが、長期的に繰り返し音読していくことで、ラテン語の理解のスピードはどんどん上がっていきます。そうすると、もはやラテン語ははじめの頃のようなパズルではなく、まとまった意味のかたまりを組み合わせたブロックのように見えてくるでしょう。
文法を一通り学んで、長文の読解に取り組んでいる中級者にも、音読はおすすめです。たくさんの時間をかけて文法を解読していった文章を身につけていくためにも、音読をしてラテン語の文章に慣れていきましょう。そうしていくうちに、次に似たような文章を見たときにパッとわかるようになるはずです。理解できる構文のストックを地道にためていくことが、ラテン語(に限らず、あらゆる言語で)上達への近道なのです。
現代語のようにはすんなりとはいかないかもしれませんが、音読の効果は抜群ですよ。
まとめ
記事のポイントを整理します。
見出し(全角15文字)
・ラテン語は難しいので、時間のかかる覚悟をする
・すでに習った文法を復習する。意外な見落としが!
・単語帳を作るのもおススメ
・人と比べない
・気晴らしをする
・音読しよう~できれば丸暗記~
こんな感じです。
この記事を読み終えたら、時間を作ってラテン語の文法書を読み返して音読してみましょう。
楽しいラテン語ライフになるように応援しています!